何をしたら懲戒解雇になる?懲戒対象6例や懲戒処分の6種類について解説

ニュースで目にする機会もある「懲戒解雇」という言葉。

かなり厳しい処分というイメージですが、どのようなものかご存知ですか?

会社からのペナルティの中でもっとも重い処分である「懲戒解雇」は、会社の死刑宣告とも言われています。

どういった理由が懲戒解雇の対象になるのか、もし懲戒解雇されたらどうすれば良いのか、具体的にみていきましょう。

実は懲戒解雇というものは労働者に一生ついて回るもので再就職の時に重大な不利益をもたらしてしまします。

懲戒解雇とは?


懲戒解雇とは社内の秩序を乱した従業員に対して行う解雇のことです。

簡単に言えば「クビ」ですが、会社からのペナルティの中でもっとも重い処分です。

日本の社会では、労働者は手厚く保護されており、会社は簡単に労働者を解雇することはできません。

解雇する場合は、解雇予告手当の支払いなどの手続きを行わなければならないことになっています。

通常の解雇でさえそれほどハードルが高いため、懲戒解雇はよほど特別な理由がなければ行うことができない処分と言えるでしょう。

懲戒処分の種類

懲戒解雇は、懲戒処分のうちの1つです。

そもそも、「懲戒」とは不当行為や不正行為を行ったことに対し、制裁をあたえることを言います。

そのため、不正や不当な行為の度合いにあわせて懲戒処分が決まります。

この懲戒処分の種類は全部で以下の6つです。

①戒告・譴責(けんせき)
口頭注意や始末書の作成などを求められるもので、懲戒処分の中では一番軽いものとなります。

しかし、軽いからといって処分を繰り返すと、減給や解雇理由となってしまうので注意しましょう。

②減給
対象者の給料を一部差し引く処分です。

差し引かれる金額ですが、1回の減給では平均賃金の1日分の半額が上限となります。

そして、減給の総額が月給総額の10分の1を超えてはならないという制限があるのです。

こちらは、労働基準法第91条で定められています。

③出勤停止
出勤停止は、会社によって異なりますが、平均的に数日~2週間程度の期間を設けられます。

また、期間中は給料は入らず有給も適用されません。

このように、期間が長いほど個人の収入が大きく減るので、人によっては収入が大きく減ってしまいます。

④降格
管理職の解任や権限の制限をかけたりする処分です。

これは、政策上での人事異動とは異なるので、混同しないように事前にしっかり説明をしておきましょう。

降格することで、給与も減ってしまうので、対象者にとっては経済的に大きなダメージを与えるものとなるでしょう。

⑤諭旨解雇・諭旨退職
懲戒処分の対象者へ、退職届を一定期間内に提出するよう勧告し、退職届を提出すれば依願退職扱いとなり、提出されない場合は懲戒解雇となる処分です。

ほとんど懲戒解雇と同じ意味合いではありますが、その前に依願退職扱いになる機会が与えられます。

そして、この処分だと退職金を支払う会社も多くなりつつあり、懲戒解雇よりも支払われる可能性が上がります。

⑥懲戒解雇
懲戒処分の中で最も重い処分です。

退職金が全額または一部が支払われない可能性があるので、個人の収入も大幅に減ります。

これに加え、解雇予告手当も支払われないことがあるので、より厳しい状況での解雇となるでしょう。

懲戒解雇と通常の解雇との違いは?

まず、懲戒解雇が重い処分ではありますが、それが通常解雇と比べてどのくらい重いのかを説明していきます。

このことを理解し、懲戒解雇の怖さを知りましょう。

退職金

普通解雇であれば、原則退職金が支払われます。

ですが、懲戒解雇の場合は会社によって変わりますが、減額または支払われないことがあります。

この部分は、会社の就業規則などに記載されていると思われますので、一度確認しておくことをおすすめします。

解雇予告

通常、解雇となった場合は解雇予定日より30日前までに会社から対象者に解雇通知をする必要があります。

もしくは、この解雇通知を行わなかった時に会社が30日分以上の平均賃金を支払う解雇予告手当が発生します。

では、懲戒解雇はどうなのか。

実は、懲戒解雇でも通常解雇と同じように解雇通知は原則必要です。

ですが、懲戒解雇の度合によっては即時解雇を行うこともあるでしょう。

その時は、解雇予告除外認定制度を適用することで、解雇予告手当を支払うことなく解雇することができます。

ただし、この制度は解雇予告除外認定申請書を所轄労働基準監督署長に提出をし、労働基準監督署の認定を受けなければなりません。

転職活動への影響

解雇となって1番気になるのは次の仕事を見つけるために行う就職活動ではないでしょうか?

通常解雇であれば、理由によっては実力不足などで改善の余地があると見られ、そこまで悪影響を与えることはありません。

ですが、通常解雇に比べ厳しい処分となる懲戒解雇は、就職活動に悪影響を与えます。

最も影響するのは、面接で必ずと言っていいほど聞かれることは「前職を辞めた理由」です。

もし、辞めた理由を聞かれても述べなかったら嘘をつくと同じ行為となり、入社できたとしてもすぐに解雇されてしまう可能性があります。

中には懲戒解雇だったことを気にしない会社もあるので、下手に嘘をついたり隠したりせず、先に懲戒解雇で前職を辞めたと伝えておきましょう。

聞かれていないから話さなかった、という理由で隠していた場合、のちに大きな問題に発展する恐れがあるので、転職活動では正直にいることが1番と言えます。

もし、転職活動で困った場合はハローワークに相談をしてみましょう。

ハローワークがどういった役割をしているか「社会人として知っておきたい!ハローワークが持つ機能とは?」で紹介しているので、参考にしてみてください。

懲戒解雇になるようなケース6例


懲戒解雇となる理由として、どのようなケースがあるのでしょうか。

明確な定めはありませんが、次のような例が考えられます。

業務上の地位を利用した犯罪行為

経理職員が不正経理によって横領をしていた、営業職員が架空取引で利益を得ていたというケースです。

刑事事件として立件されるかは関係なく、会社の損害が大きく、社員による深刻な背信行為であることから、懲戒解雇の理由には十分に当てはまると考えられます。

会社の名誉を著しく害する重大な犯罪行為

殺人、強盗、強姦などの重大犯罪や会社の名声を著しく貶めるような犯罪行為がある場合は、懲戒解雇が認められます。

経歴の重大な詐称

会社の採用判断に重要な影響を与える経歴(大卒の有無、特定資格の保有の有無等)を詐称していた場合、採用プロセスへの深刻な背信行為として、懲戒解雇が許される場合があります。

長期間の無断欠勤

正当な理由なく1ヶ月以上の無断欠勤を続けたり、度重なる出勤命令も拒否し続けたりした場合には、懲戒解雇が認められる可能性があります。

重大なセクハラ、パワハラ

通常、セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントで懲戒解雇となるケースはありません。

しかし、強制わいせつや強姦に近いセクシャル・ハラスメント、恐喝や傷害に至るようなパワー・ハラスメントの場合は、事案の悪質性から懲戒解雇が認められる可能性があります。

懲戒処分を受けても同様の行為を繰り返す

懲戒処分 (訓告や減給など)や注意指導をされていた行為を繰り返す悪質なケースです。

軽度のパワハラ・セクハラ、無断欠勤、業務命令違反など、是正措置に従わない場合は、懲戒解雇が認められる可能性があります。

懲戒解雇になりそうになったらするべきこと

まずは就業規則を確認しましょう。

懲戒解雇をする場合、その理由が就業規則や雇用契約書に記載されていなければなりません。

就業規則にその理由が記載されているかを確認することが必要です。

次に、解雇理由証明書の発行を会社側に申請します。

懲戒解雇に限らず、解雇されてしまった際は、「解雇理由証明書」の発行をしてもらうことができます。

不当解雇を主張する際の証拠にもなりますので、しっかりと取得しましょう。

懲戒解雇が正当かの判断には客観的な視点が必要になります。

一度弁護士に相談をすることが賢明です。

懲戒解雇はキャリア上マイナス?


転職活動への影響」でも説明しましたが、懲戒解雇された事実は、その後の転職活動で大きなマイナスとなるでしょう。

懲戒解雇では離職票に「重責解雇」と記載されてしまいます。

転職先の企業から離職票の提出を求められることがあるため、そういった書類から懲戒解雇されたことが明るみに出る可能性があります。

また、履歴書や面接で「懲戒解雇で退職」とわざわざ伝える必要はありませんが、「前職を自己都合で退職した」などと嘘の申告をすれば、経歴詐称で次の会社でも解雇される可能性が出てきてしまいます。

よほど重大な損益を会社に与えない限り、懲戒解雇とはなりません。

どういった行為が懲戒解雇の対象となるのか理解し、そのような事態に陥らないよう努めましょう。

まとめ

いかがでしょうか。

懲戒解雇とは、懲戒処分の中で最も重い処分であり、転職活動にも影響を与えるものです。

会社の不利益になることや、問題視されるような行為をせず、会社の就業規則を守って仕事に向き合いましょう。

もし、懲戒解雇となっても、転職が難しいだけなので、仕事が見つからないわけではありません。

1人では見つからなくても、ハローワークに相談をし、次の就職先を見つけてくださいね。